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最新救急事情

プレホスピタルケア 2020/10/20日号 p88

最新救急事情(218-1)

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第三文明 2020/10月号, p60-6268-74(function(b,c,f,g,a,d,e){b.MoshimoAffiliateObject=a;b=b||function(){arguments.currentScript=c...

今まで新型コロナウイルスの感染経路は飛沫感染と接触感染の二つとされていた。患者がした咳などの飛沫が1m以内にいる相手の口や鼻に入って感染するのが飛沫感染、患者が触ったものを触って、その指で自分の口周りにウイルスをつけることで感染するのが接触感染である。ところがWHOが2020年7月9日に出した新ガイドラインでは、空気感染の可能性が追加された。救急隊にとっては大きな問題となる。

目次

空気感染とは

ウイルスが空気中を漂い、それを吸い込んだ人が感染することを空気感染という。
今まで空気感染を起こすのは結核などわずかの病原体しか知られていなかったが、それに追加されてることとなった。空気感染の可能性は早くから指摘されていた。中国の飲食店で、エアコンの下流に患者が大量発生した事例がそれである。私が空気感染だろうと思ったのは、2020年3月4日夕方に家族に「コロナばらまく」と宣言して愛知県蒲郡市のフィリピンパブを訪れた事件である。この男は事件の3日後にコロナ感染症で死亡している。テレビでの解説では、男は監視カメラの奥、店の入り口のソファに横になり開店を待ち、開店後は監視カメラ至近のテーブルで酒を飲み、30分後にコロナ感染がバレて退店している。この事件で感染した人は女性で、男がいたテーブルからも寝ていたソファからも十分な距離があるように見える(図1)。

図1
配置図。絵では近接して書いてあるが、このフィリピンパブはとても大きく、実際にはそれぞれの場所は5m以上離れているように見える

空気感染を起こす仕組み

病原体を含んだ大部分の飛沫は重いのですぐ床に落ちる。比較的軽い飛沫は空気を漂う途中で水分が蒸発し、病原体を含んだ5μm未満の塊(飛沫核もしくはエアロゾルと言われる)だけになる。この飛沫核は軽いので空気中をいつまでも漂い、感染者からの距離や時間に関係なく、同じ空気を吸った人に感染を起こす。
どんな病原体でも飛沫核になって漂うのだが、通常は水分が蒸発することで感染性が消滅する。インフルエンザに空気感染が認められないのはそのためである。
飛沫核は飛沫からできるので、唾を飛ばす量に比例して飛沫核が発生する。喋った音量や時間が長ければそれだけ飛沫核もできる。怒鳴ったり大声で歌ったりすれば大量の飛沫核が発生する。

空気感染を起こすという証拠

空気感染モデルでは密閉した空間に新型コロナを散布したところ、3時間後、16時間後、1日経っても新型コロナの遺伝子RNAを抽出できた。患者がいる部屋から空気を採取したところ新型コロナのRNAが検出されたという報告もある。
空気感染だろうという症例報告もたくさん出ている。WHOで取り上げているのは・合唱の練習・レストランん・フィットネスクラブの3つである。これらの場所は患者が密閉された空間で話し込んだり大声をあげたりするからと書かれている。

マスクをして窓を開けよ

救急隊が取るべき方法は2つである。

(1)マスクをする:


 

今までヘルスケア関係者がマスクなどの感染防御具を着用していて空気感染を起こした例は報告されていない。このことは、空気感染はマスク1枚で防げるという可能性を示唆している。

(2)窓を開ける:

救急車で患者を乗せる場所は窓が開かないかもしれない。だが運転席や助手席は窓が開く。いくら暑くても寒くても窓を開けること。全開にする必要はなく、空気が出入りできればそれで空気感染の可能性は減少する。なお、救急車内の空気清浄機を使うという記事も見たことがあるが、その空気清浄機が持つ能力やフィルターの汚れ具合によってウイルスの吸着能力は全く異なってくるので、期待しないほうがいいだろう。

参考文献

World Health Organization Scientific Brief 9 July 2020

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