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201217救急隊員日誌(196) おかしいと思ったことはおかしいと上司に問おう

月刊消防2020/9/1, p49
空飛ぶクルマ
「おかしいと思ったことはおかしいと上司に問おう」

私たち救急隊は24時間勤務の中で、出動していない時間は救急報告書の作成や救急訓練等を行っている。また、人事異動により救急隊のメンバーが毎年変わるため、隊活動がスムーズに行えるよう訓練は必要である。救急訓練は、基本手技や特定行為、想定訓練等、様々な現場に対応できるよう上司とも相談しながら実施している。

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先日、救急訓練中に『一般負傷』で出動指令がかかった。家族からの通報で、「81歳男性、歩行中に誤って転倒し、右肘の痛みを訴えている」との内容であった。消防署から現場まで少し遠い現場で、出動から現場到着までに10分以上かかるため、救急車内から通報者へプレアライバルコール(現場到着前電話連絡)を実施した。出動直後から2~3分間隔で電話したが、3回とも話し中であった。あとからわかった事であるが、家族が通信指令員とずっと電話していたためであった。現場到着後、私がファーストコンタクトして、橈骨動脈で脈拍を触れた時に発熱を感じたため、家族にコロナウイルス感染症の疑いを聴取したところ「感染拡大地域(関西方面)に住む娘との接触があった」「「娘の会社にもコロナウイルス陽性者がいる」とのことであった。

病院収容後、ウイルス性肺炎があり、医師の指示でPCR検査が行われることになった。翌日、保健所経由で病院から連絡があり、結果的には傷病者は陰性であった。

傷病者にコロナウイルス感染症疑いがあったため、搬送後に救急車内の消毒と隊員の着替えを行った。その後、通信指令員の上司に、「事故種別が『一般負傷』や『交通』などであっても、可能であればコロナウイルス感染症の疑いがあるか、聴取すべきである。第三者の通報の場合は困難であると思うが、今回は家族の通報であったため、聴取はできたと思う。現在の状況ではコロナウイルスの情報は必要である。」と訴えた。ところが通信司令員の上司に加え、そのやりとりを横で聞いていた救急隊長にも「『急病』以外でコロナウイルス感染症に関する情報の聴取の必要はない」と言われ、言い合いになってしまった。


コロナウイルス感染症をもつ人が『急病』に限って救急要請を行うのではない。今まで、事故種別が『交通』で出動し、実際は心筋梗塞を発症して事故を起こした症例や、事故種別が『一般負傷』で出動し、実際は脳梗塞を発症して転倒した症例も経験している。また、自隊が救急搬送した傷病者で、事故種別とは異なり、私自身が思い描いた傷病名と全く異なることもある。119番通報に至る原因が事故種別とは全く違うことは考えられることであり、『急病』以外に聴取の必要がないというのに納得ができなかった。急病以外にも、情報収集の必要性を訴えたが、上司の理解は得られなかった。

情報収集は傷病者の回復のためだけでなく、私たち救急隊のためにも必要である。感染防止対策は通報から始まる。上司に嫌われても、おかしいと思ったことは、今後も、おかしいと上司に問いたい。それくらいの強い信念をもって、救急活動を行っている。

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